なぜ、東風(ひがしかぜ・とうふう)を「こち」と読むのか、少し気になり、調べてみました。
語源辞典によれば,2つの説があるそうです。
説1
「コ(来)+チ(方角)」日が差して来る方向、もしくは、吹く風
説2
「コ(小・東)+チ(風)」東から吹く風、春風の意。
(日本語源広辞典 ミネルヴァ書房 2012 より)
個人的にいえば、説2の「コ(小)+チ(風)」が感覚的に合います。
夕東風や海の船ゐる隅田川 水原秋櫻子
東風の船汽笛真白く吹きやめず 山口誓子
東風寒く皮はぎ皮をはがれけり 鈴木真砂女
夕東風にしたがふごとく発つ汽車も 宮津昭彦
東風吹くや耳現はるるうなゐ髪 杉田久女
ちなみに、「梅東風」などと使う場合の「梅」(うめ)も、
大和言葉ではなく、中国語の「梅」(メイ)が訛ったものだそうです。
なお、山本健吉が解説を書いている「図説 日本大歳時記」(講談社 1983)
では、(「ち」は風、「こ」は不明としています。)
(傍題)
こち風、正東風(まごち)、強東風(つよごち)、朝東風、夕東風、雲雀東風、梅東風、
桜東風、あめ東風、鰆(さわら)東風、いなだ東風、あゆの風